日本の平均降雨量は実は熱帯なみで、東京でも2000年1年のうち、ちょっとでも雨がぱらついた日はなんと189日。半分以上だった(ちなみに1cm以上降った日は約100日)。パリやロンドンの2・5倍は降るという。日本は雨の国なのだ。吉用兼好は、家は夏を第一として建てるべきだといったが、実は「雨の日を旨として建てるべし」なのかもしれない。しかも、8月の平均気温はジャカルタやバンコク並みで、太陽の目簾しはやはり熱帯並みにきついだから、軒や庇を深く出す建築が根付いた。
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いや、そういう建築物が実際に長持ちした。風景として、伝統的な日本家屋の特徴に思いをはせたときにも、地銀の瓦を乗せた軒先が背景の青空を仕切るシャープさと、庭に張りだした深い庇が日差しを遮って土壁に落ちる陰影の深さ。こういった光と影の関係が、日本情緒の一部をなしている。我が家でも、南の庭側に1cm(雨樋と合わせて1・25cm)ほどの庇を出したから、雨の日でも窓を開け放って、雨音の風情にひたりながら一杯飲むことができる。夏の日差しもしのぎやすい。ところが、都市部の住宅では、建ぺい率、容積率に加えて北側斜線制限が厳しくて、多少余裕のある敷地でなければ軒や庇が出せない。だから、出っ張りのない箱形の洋風住宅が増えてゆく。みんな少しでも部屋を大きく取りたいから、こうなるのは無理もない。軒や庇で和風を演出するには、15〜20%余裕のある敷地がいるからだ。たとえば30坪程度の敷地に家を建てる場合、道路からすぐ駐車場があり、車のむこうに玄関がくっついているレイアウトがよく見られる。もし、和風を演出したい場合、どんな車でも玄関前は似合わない(玄関の意匠が死んでしまう)から、思い切って外に駐車場を借りるという手もあるだろう。通常駐車場には5〜7坪ほどとられるから、このスペースを浮かすことができれば、15〜20%敷地の余裕が生まれ、そこに演出できる劇場的な空間が登場する。